たこぶろぐ

ブンボーグA(エース)他故壁氏が、文房具を中心に雑多な趣味を曖昧に語る適当なBlogです。

金属つけペンで天を衝け!:シオン「ドリログ」
というわけで、WEZZYに送っておきながら掲載されなかった原稿供養第三弾。
これまた発売からけっこう経ってしまいましたね。

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 日々、万年筆用のインクが新しく発売されています。魅力的な色、変わった瓶の形、香り、輝き、紙に載ったときの色変わり。でも欲しいと思ったものを片っ端から買っているうちに、自宅が瓶だらけに……そんな方、いらっしゃいませんか。
 万年筆だとコンバータを使用してインクを内部に入れてしまうので、違う色に入れ替えるたびに洗浄しなければなりません。これは万年筆を常用するひとでも手間のかかる作業ですし、ライトなユーザには億劫ですよね。
 そこで現在では、ペン先をインク瓶につけて書ける手軽さから、ガラスペンが流行しています。
 ガラスペンは装飾性が高く見た目も美しいのですが、「書いた線」の話になると個体差が大きく、バリバリと筆記に使いたい方はその「巡り会い」に賭けるしかないのが現状でした。
 では、調整が困難で品質を一定にできないガラスとは異なり、品質管理され一定の書き心地が保証される金属で作成されたつけペンはないのでしょうか。もちろんGペンやかぶらペンといった従来からあるつけペンは現在でも健在ですが、そうではない「21世紀の筆記具」としての金属つけペンがあれば、インクによる筆記ももっと楽しく行うことができるのではないでしょうか。
 今回ご紹介する有限会社シオンの「ドリログ」は、そんな21世紀の新しい筆記具を目指した野心的な製品です。



 ドリログという名は、切削道具である「ドリル」と対話を意味する「ダイアログ」からなる造語で、確かにそのペン先はドリルを彷彿させる尖りを見せています。
 シオンの職人がデザインしたそのペン先は、シオンの本業でもある航空産業における切削パーツ作成技術がふんだんに活かされています。



 ペン先はステンレス製で、0.5mmと0.8mmの二種類。価格はともに16,280円(税込)で、本製品はペン先だけの販売となっています。ペン先をつけるための専用ペン軸は別売りで、種類がいくつかあります。わたしは今回、ツインズ・スパイラルAと呼ばれる両頭軸を購入しました。こちらは15,180円(税込)でした。



 数値コントロールによる精密切削で作成されたドリログのペン先には、本製品にしかない特殊な技術が使用されています。
 そもそも、ペン先にはインク瓶に浸けた際に供給されるインクが保持されていなければなりません。Gペンなど金属製のつけペンは裏面が反ってへこんでおり、そこにインクを表面張力で溜め込んでいました。ガラスペンでは螺旋上に溝が掘られ、そこにインクが毛細管現象で保持されています。
 ドリログの表面にも、ガラスペン同様に溝があります。ところが実験の結果、ステンレスはガラスと違って、溝に液体を保持できないことが判りました。溝にインクが入ってもインクはそこに溜まらず、すべて滑り落ちてしまったのです。
 ドリログを作成する際、最も困難だったのがこの「ステンレスの溝にインクを溜めておくための加工」でした。その保持加工方法は社外秘ですが、これによりドリログは「ガラスペンのように簡単に使える」つけペンになりました。



 0.5mmの筆線はぐっと細く、体感的にはミリペンの0.1ミリ、万年筆ではEFの線が書けます。ただし用紙を選ぶペン先で、ひっかいてしまったり毛羽だってしまうような紙では本領を発揮できません。可能な限り表面の滑らかな用紙を選ぶと、かりかりとした快適な筆記が楽しめます。
 先端研磨の困難さで言えば、0.5mmのほうが0.8mmに較べ書き心地を維持するためにより高度な技術を伴う製品ですので、それに合う用紙でぜひお使いいただきたいですね。



 0.8mmの筆線はミリペンでは0.3mm、万年筆ではFからMあたりでしょうか。文字を書く際にも絵を描く際にも実になめらかに、するすると筆が進みます。まるで抵抗がないかのようなするする感が癖になりますね。



 紙を選ぶこともないので、万能性を重視するなら0.8mmです。ただインクによって、書かれた文字の太さがかなり変わります。また0.5mmの細い線は0.8mmではぜったいに出ないので、とにかく細くて安定した線を引きたい場合は0.5mmをお薦めします。



 耐酸性を持たせたステンレスのペン先は錆にも強く、水による洗浄が容易です。洗浄水をコップに用意してペン先をさっと洗い、かるくぬぐってから次のインクをつけて書くといった作業も簡単です。たいへん丈夫なペン先ですので、書いていて摩耗することもありません。



 使えるインクは万年筆用であれば、どんなインクでも問題なく書くことができます。シオンでは試し書きにペリカンのブルーブラックを使用しているそうですが、ペリカンのブルーブラックは古典インクです。化学変化を起こして耐水性を出すタイプのインクでも、ドリログは安心して使用できます。



 ラメインクのような流れにくい素材を内包しているインクの場合は、流用が多くなる0.8mmのドリログをお薦めします。0.5mmでは溝が詰まって書けなくなる可能性があるからです。



 メンテナンスが楽、筆記線が安定、摩耗やインクによる劣化なしと、三拍子そろった21世紀の新しいつけペン──それがドリログです。かりかりの0.5mmも、するするの0.8mmも、本当に書いていて楽しいです。インクをたくさんお持ちの方、これで消費が捗りますよ!

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