"【文房具を語る】"カテゴリーの記事一覧
-
というわけで、WEZZYに送っておきながら掲載されなかった原稿供養第三弾。
これまた発売からけっこう経ってしまいましたね。
※ ※ ※ ※ ※
日々、万年筆用のインクが新しく発売されています。魅力的な色、変わった瓶の形、香り、輝き、紙に載ったときの色変わり。でも欲しいと思ったものを片っ端から買っているうちに、自宅が瓶だらけに……そんな方、いらっしゃいませんか。
万年筆だとコンバータを使用してインクを内部に入れてしまうので、違う色に入れ替えるたびに洗浄しなければなりません。これは万年筆を常用するひとでも手間のかかる作業ですし、ライトなユーザには億劫ですよね。
そこで現在では、ペン先をインク瓶につけて書ける手軽さから、ガラスペンが流行しています。
ガラスペンは装飾性が高く見た目も美しいのですが、「書いた線」の話になると個体差が大きく、バリバリと筆記に使いたい方はその「巡り会い」に賭けるしかないのが現状でした。
では、調整が困難で品質を一定にできないガラスとは異なり、品質管理され一定の書き心地が保証される金属で作成されたつけペンはないのでしょうか。もちろんGペンやかぶらペンといった従来からあるつけペンは現在でも健在ですが、そうではない「21世紀の筆記具」としての金属つけペンがあれば、インクによる筆記ももっと楽しく行うことができるのではないでしょうか。
今回ご紹介する有限会社シオンの「ドリログ」は、そんな21世紀の新しい筆記具を目指した野心的な製品です。
ドリログという名は、切削道具である「ドリル」と対話を意味する「ダイアログ」からなる造語で、確かにそのペン先はドリルを彷彿させる尖りを見せています。
シオンの職人がデザインしたそのペン先は、シオンの本業でもある航空産業における切削パーツ作成技術がふんだんに活かされています。
ペン先はステンレス製で、0.5mmと0.8mmの二種類。価格はともに16,280円(税込)で、本製品はペン先だけの販売となっています。ペン先をつけるための専用ペン軸は別売りで、種類がいくつかあります。わたしは今回、ツインズ・スパイラルAと呼ばれる両頭軸を購入しました。こちらは15,180円(税込)でした。
数値コントロールによる精密切削で作成されたドリログのペン先には、本製品にしかない特殊な技術が使用されています。
そもそも、ペン先にはインク瓶に浸けた際に供給されるインクが保持されていなければなりません。Gペンなど金属製のつけペンは裏面が反ってへこんでおり、そこにインクを表面張力で溜め込んでいました。ガラスペンでは螺旋上に溝が掘られ、そこにインクが毛細管現象で保持されています。
ドリログの表面にも、ガラスペン同様に溝があります。ところが実験の結果、ステンレスはガラスと違って、溝に液体を保持できないことが判りました。溝にインクが入ってもインクはそこに溜まらず、すべて滑り落ちてしまったのです。
ドリログを作成する際、最も困難だったのがこの「ステンレスの溝にインクを溜めておくための加工」でした。その保持加工方法は社外秘ですが、これによりドリログは「ガラスペンのように簡単に使える」つけペンになりました。
0.5mmの筆線はぐっと細く、体感的にはミリペンの0.1ミリ、万年筆ではEFの線が書けます。ただし用紙を選ぶペン先で、ひっかいてしまったり毛羽だってしまうような紙では本領を発揮できません。可能な限り表面の滑らかな用紙を選ぶと、かりかりとした快適な筆記が楽しめます。
先端研磨の困難さで言えば、0.5mmのほうが0.8mmに較べ書き心地を維持するためにより高度な技術を伴う製品ですので、それに合う用紙でぜひお使いいただきたいですね。
0.8mmの筆線はミリペンでは0.3mm、万年筆ではFからMあたりでしょうか。文字を書く際にも絵を描く際にも実になめらかに、するすると筆が進みます。まるで抵抗がないかのようなするする感が癖になりますね。
紙を選ぶこともないので、万能性を重視するなら0.8mmです。ただインクによって、書かれた文字の太さがかなり変わります。また0.5mmの細い線は0.8mmではぜったいに出ないので、とにかく細くて安定した線を引きたい場合は0.5mmをお薦めします。
耐酸性を持たせたステンレスのペン先は錆にも強く、水による洗浄が容易です。洗浄水をコップに用意してペン先をさっと洗い、かるくぬぐってから次のインクをつけて書くといった作業も簡単です。たいへん丈夫なペン先ですので、書いていて摩耗することもありません。
使えるインクは万年筆用であれば、どんなインクでも問題なく書くことができます。シオンでは試し書きにペリカンのブルーブラックを使用しているそうですが、ペリカンのブルーブラックは古典インクです。化学変化を起こして耐水性を出すタイプのインクでも、ドリログは安心して使用できます。
ラメインクのような流れにくい素材を内包しているインクの場合は、流用が多くなる0.8mmのドリログをお薦めします。0.5mmでは溝が詰まって書けなくなる可能性があるからです。
メンテナンスが楽、筆記線が安定、摩耗やインクによる劣化なしと、三拍子そろった21世紀の新しいつけペン──それがドリログです。かりかりの0.5mmも、するするの0.8mmも、本当に書いていて楽しいです。インクをたくさんお持ちの方、これで消費が捗りますよ! -
というわけで、WEZZYに送っておきながら掲載されなかった原稿供養第二弾。
発売からけっこう経ってしまいましたね。
※ ※ ※ ※ ※
みなさま、テレワークされてますか? テレワークは昨今のコロナ禍における政府主導の働きかけもあり、在宅勤務が可能な企業はお試し程度であったとしても実践をされている例が多いのではではないでしょうか。
会社から支給されたノートパソコンで自宅作業していると、執務用の机がないケースもあって、食卓や座卓に置いて使うことになりがち。そうなると、会社にあるような立派な椅子ではないので腰痛になりやすく、だからといっていつかは終わるテレワークのために何万もする椅子は買えませんよね。
そんな在宅勤務の貴方の腰を守るのが、今回ご紹介するカウネットの「パタスタ」です。
スタンディングデスクによる執務を経験されたことはありますでしょうか。同じ位置で同じ姿勢でキーボード入力をしていたら、どんな立派な椅子を使っていても筋肉は凝り固まってしまうものです。そんなとき、立った状態でキー入力ができるように、デスク自体が電動で昇降するものがあります。
もちろん個人でこのようなハイスペックなデスクを入れるのはナンセンスでしょう。電動昇降デスクは安くても5万円しますが、パタスタは5,478円(税込)です。この額で腰を守るために立ったまま仕事ができるのであれば、安いものですよね。
パタスタは芯材であるボール紙をPVCのカバーで覆った、組み立て式のPCスタンドです。購入時はひらべったい状態でダンボール個装されています。
折りたたんだ状態の大きさは幅450mm、奥行425mm、厚みが20mm。重量は1,550gと、見た目より重いです。把手状の窪みがあって持ち上げる際に補助になるのですが、把手がちょっと手に食い込む感じがします。もっとも、本製品は持ち運んで様々なところで使うというよりは、使う机の脇に畳んで置いておくことがメインだと思いますので、持ちやすさ云々はそこまで重要な要素ではないのでしょう。
収納時は面積こそありますが薄いので、机の横などに隙間があればさっと収納しておくことができます。
組立は簡単です。パタスタはネイビー、ブルー、ホワイト、ブラウンと4色で展開されていますが、すべて裏面はグレーです。まず、このグレーの面が上になるように開いて置きます。
そして把手状になったほうの両端を内側に折り曲げて立たせます。同時に穴だけあいている面を持ち上げ、山のように折り曲げておきます。
折り曲げた山には縦に細い2本のスリットが空いています。ここに、さきほど把手側で折り曲げ立たせた先端を挿入します。挿入ののち、把手パーツだったコの字の部分を折り込むと、挿入されたパーツがグッと奥まで入り込みます。
固定される位置まで挿入されたら、パーツ先端を内側に折り込み、残った上部パーツを載せると完成です。思った以上に簡単に、スタンディングデスクのできあがりです。
折りたたみは手順を逆にするだけですが、ご家庭で使用される際には、組んだまま床に放置しておくズボラな使い方も許されそうですよね。また、不要な場合はデスクの横に組んだまま置いておいて、ローテーブル的に使うことも可能です。
上面はノートパソコンを置いてキーを打っても撓むことがなく、かなり丈夫です。16inchクラスの大きめのノートパソコンでも余裕で置けますし、13inchクラスの小さめの機種なら横にマウスを置いて使うスペースも確保できます。
わたしの身長は168cmですが、自宅の机(高さ71cm)の机にパタスタを置いて、MacBookAirにてこの原稿を書いています。肘がやや曲がる程度でキーボードに打鍵していますが、成人男性にはパタスタはやや低いかもしれません。もう少し肘を直角に曲げたい場合は、パタスタ天面とノートパソコンの間に厚みがあってぐらつかないものを敷いて高さ調整をするほうがいいかもしれません。
座卓では低すぎて腰や肩に負担が大きかった方も、パタスタを置くことでキーボードの位置が高くなり、作業が楽になるケースもあると思います。
芯材がボール紙ですので、一点集中の過重量にはご注意下さい。一度でも芯材が折れてしまうと、もう強度を出すことができなくまります。
表面のPVCは汚れに強く、ちょっと水分がかかった程度ならすぐ拭けば問題ありません。ただ内部に浸水した場合は芯材に影響が出ると思われますので、基本的には濡れるような環境はNGとお考え下さい。
まだまだこれからも、自宅でのテレワークはなくならないと思います。ずっと座りっぱなしは危険です。そんな時、あなたの腰を守るため、ぜひ本製品を試してみてください。さっと組み立ててスタンディング、さっと戻してデスクワーク。これからの、身体を守る就業スタイルです。 -
2021年10月16日(土曜日)正午より開催されるトークライブ「ご当地インクでSHOW!」ですが、配信だけでなくライブハウスでのリアル観覧も可能となっております。
場所は東京、阿佐ヶ谷にあります阿佐ヶ谷ロフトA。
駅から近いので、安心していらっしゃってください。
感染対策もばっちり、プロの仕事で無問題です。
でも、「今までライブハウスとか行ったことないし、トークライブってどんな雰囲気なのか判らない……」と躊躇されている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、阿佐ヶ谷ロフトAの店内をご紹介し、ライブの雰囲気を体感していただきたいと思っております。
古い写真で恐縮ですが、わたしが阿佐ヶ谷ロフトAでトークした時の写真を引っ張り出して参りました。
2013年10月5日(土曜日)に行われました、「朝まで生OKB(お気に入りボールペン)48総選挙meetsブングジャム」での記録写真です。
ですので、現在の店内と細かな点で変化があることをご承知おき願います。
阿佐ヶ谷ロフトAは地下の店舗です。阿佐ヶ谷パールセンター商店街を歩く際、見落とさないようにしてください。駅から商店街に入った場合、左側に店舗があります。
この入り口が「素人お断り」みたいに見えるかもしれませんが、ビビらずゆっくり階段を降りてください。
扉を開けるとバーカウンターがあり、チケットを購入して左奥に入るとメインステージが姿を現します。
スクリーンを展開した状態でのステージはこんな感じです。
客席側です。
密を避けるため、2021年現在はもっと間引きされた状態になっていると思います。
飲食店ですので、いらっしゃった際にはぜひワンドリンクと、可能であれば昼食をここで摂っていただけるとありがたいです。
めしはうまいです。
食べてるときは黙食で。観覧中はマスクで。ご協力のほどを宜しくお願いします。
スライドはスクリーンに投影します。
このスクリーンと、壇上にいるわれわれ(今回のトークライブでは、語り:ふじいなおみと司会:他故壁氏が壇上にいます)を抜いた画像を配信用のカメラが狙うことになります。
壇上から客席を見ると、こんな感じになります。
スライド上映の際には店内はやや薄暗くなると思いますので、ご了承下さい。
秘密基地っぽい雰囲気の中で楽しくトークしたいと思っております。
東京近郊にお住まいの方、ぜひ会場に遊びに来て下さい。
会場限定でグッズ販売やインク販売も行います。
改めまして、以下にチケット購入のリンクを張っておきます。
■会場観覧ご希望の方(阿佐ヶ谷ロフトA:Peatix)
■配信観覧ご希望の方(ツイキャス)
会場観覧は前売り2,000円、当日2,500円。
配信観覧は1,500円、カンパつき応援観覧が2,000円。
配信は会終了後、2週間まで見逃し配信を行います。
宜しくお願いします! -
※2021年10月6日:記事の一部に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。
蛍光マーカーって、いろいろな種類が世に出ていますよね。
個性的なマーカーも多いのですが、さらに個性的なペンが登場しました。
エポックケミカルの「マルライナー」です。
まずご紹介したいのは、特徴的なケースによって連結された「マルライナーツインズ」です。
組み合わせは以下の通り。
・イエローとオレンジ
・グリーンとブルー
・パープルとピンク
2本セットで1つ352円(税込)です。
キャップがひとつという大胆なデザインで、このキャップはケース尾部に装着が可能です。
先端は弾力のある丸型で、力をかけずにそっとペン先を紙に置くと約1ミリの、力をかけると約5ミリの円状筆跡を残すことができます。そして筆圧をかけずに引くと約1ミリの、力をかけて引くと約5ミリのラインを描くことができます。5ミリラインを引く場合は、かなりインクが染み出てきて乾きが遅くなりますのでご注意下さい。
エポックケミカルは、「従来のくさび型チップでは方向の見極めが必要で、さっと引きたい線を引くことができない。このマルライナーなら太さも含め、すばやく好きな太さのラインを引くことができる」としています。
確かに、ツインズとして2本並べてしまうと、チゼルチップ(くさび型)ではラインをコントロールできません。「平太の線を引くため」と「尖った先端で細く線を引くため」の快適な角度は決まっていますから、いずれかの機能を損なってしまいます。
でも、この「押すと変形する」丸いチップなら、細太の両方をひとつのペン先で引き分けることができます。
2本セットであるツインズの特長は、異なる色の蛍光マーカーを持つことができること、そして先端が同方向を向いているので本体を手の中で回すことで短時間にカラーチェンジができることです。
下にあるペンが書きたいペンです。
色を変えたかったら、手の中でくるりと回して……
上にあったペンを下に持ってきます。
そうじゃなくて、互い違いになっていて、一般的な両頭マーカーのように使いたいという方もいらっしゃるかもしれません。
そういうときは本体を分解して組み替えることができます。
こんな感じに。
ただし、この状態ですと、キャップを閉めることができません。
そういう場合は、ばら売りのマルライナーを購入するのが便利です。
ばら売りのマルライナーには、単品用のキャップがついているからです。
【2021年10月6日訂正】
大変申し訳ございません。
わたし、マルライナーツインズのキャップが分離できることにまったく気づいておりませんでした。
ですので、ツインズのみでペン先前後モードを組むことが可能です。
お詫びして訂正させていただきます。
マルライナーはバラで24色が用意されています。
・イエロー(ツインズに採用)
・エッグヨーク
・フラミンゴ
・オレンジ(ツインズに採用)
・アーモンド
・キャメル
・オリーブ
・グリーン(ツインズに採用)
・ピーコック
・トルマリン
・シルキーグリーン
・アップルグリーン
・フレンチブルー
・ブルー(ツインズに採用)
・セルリアンブルー
・クロッカス
・パープル(ツインズに採用)
・オーキッド
・ピオニー
・アイスパープル
・フロリダピンク
・パウダーピンク
・ピンク(ツインズに採用)
・ワイルドベリー
ここからお好きな色を選んで交換するもよし、同色を予備として購入するもよし。
バラの値段は1本154円(税込)です。
ちなみにばら売りには丸型チップだけでなく、ポーラスポイントチップ──一般に言うミリペン形状の「ホソライナー」も12色用意されています。
・アーモンド
・キャメル
・オリーブ
・トルマリン
・アップルグリーン
・ブルー
・セルリアンブルー
・クロッカス
・パープル
・ピオニー
・ワイルドベリー
・シルバーグレー
このホソライナーをツインに組み込んで、ラインマーカー+ミリペンとして使うのもいいですよね。
ホソライナーも、マルライナー同様に1本154円(税込)です。
さて、本製品群は蛍光マーカーとして販売されていますが、全色が「蛍光」というわけではありません。
それは他社でも同様で、蛍光=フォトルミネセンス(「照射光の反射」ではなく「照射光を受け、物質内の電子が励起し、照射光とは別の光を放射する現象」)と考えた場合、蛍光マーカーセットの中で蛍光インクは数色しかない、ということがあります。
もっとも、ラインを引いたら「明るく見える」ことが蛍光マーカーの条件だとすれば、すべてがフォトルミネセンスによって発色しなくてもいいわけですよね。シリーズにまったく蛍光インクが含まれていない場合は「ラインマーカー」という名称になります。
マルライナーも、そういう意味では一部のカラーが蛍光インクを使用した蛍光マーカーという位置づけです。
ツインズに装備された6色のうち、紫外線を当てて強く発光するのはイエロー、オレンジ、グリーンの3色。
ブルー、パープル、ピンクは発光しませんでした。ピンクはちょっと意外でしたね。
本製品は、今までにない「2本の蛍光マーカーあるいは蛍光ミリペンを組み合わせて1本にできる」画期的な製品です。そして1本に2色入っている製品が「片方の色が使えなくなったら製品価値が半減する」のに対し、本体をまるごと交換補充できるため無駄がありません。
店頭で見かけたら、まずはツインズをひとつと、あとは気に入ったバラを購入してみてください。きっとあなたの蛍光マーカーライフを豊かなものにしてくれますよ。 -
芸術の秋、とよく謳われますよね。
芸術の秋は1918年に雑誌『新潮』が「美術の秋」という言葉を使った記事を掲載したから、という説を聞いたことがあります。これが事実だとしても、新潮社が「美術=秋」を発明したわけではなく、その以前から社会的には「美術=秋」の雰囲気があったのではないかと思っています。
さて美術……芸術の秋ですが、わたしのような文房具好きにとって、「文房具を使って表現できる美術」とはやはり「絵」のことではないかと思うのです。
わたしも絵画からはほど遠いものではありますが、絵を描きます。日常でそこに色を塗るケースは少ないですし、世間に発表するような完成した絵を描くこともないのですが、それでもたまに描いた絵に色を入れたくなることがあります。
いちばん手軽に、描いた絵に色をのせることができるとしたら──色鉛筆でしょうかね。
水彩のように水や筆、パレットなどの道具を用意することなく、さっと手軽に使えること。
カラーペンのように強い色が出ない分、失敗が少なく気軽に使えること。
消しゴムで消せるタイプだと、なお気楽でいいですよね。
そんな「ちょっとした彩色に気軽に使えて並んでいてもおしゃれ」な製品があったら──そう夢想していたところに、三菱鉛筆がドンピシャの製品を出してきました。
それが今回ご紹介する「エモットペンシル」です。
エモットペンシルは、形状で言えば「カラー芯の入ったシャープペンシル」です。0.9ミリの芯はもちろん字を書くこともできますが、それでもやはりこのペンの真骨頂は「色鉛筆として塗る」ことだろうと思うのです。
今回は4色+ケーススタンド+その4色の替芯という構成のセットが3種類出ています。
定価は税込1,100円です。
写真左から順に、
No.1 リフレッシュカラー
・ライトブルー(8)
・グリーン(6)
・バイオレット(12)
・レッド(15)
No.2 トロピカルカラー
・ライトピンク(51)
・ライトグリーン(5)
・オレンジ(4)
・フューシャ(11)
No.3 ノスタルジックカラー
・ブルーブラック(64)
・カーキグリーン(7)
・バーミリオン(16)
・イエロー(2)
となっています。
そもそもわたしは、色彩感覚が雑で、原色を塗りたくって調和しない絵を描きがちな子供でした。
今でもその感覚に変化はなく、カラーを扱うことに恐怖心があります。
そんな人のためでしょうか、エモットペンシルは1セットで「それっぽい絵を描くための基本セット」になっています。
リフレッシュカラーなら、爽やかで癒やしを与える効果を。
トロピカルカラーなら、南国っぽい鮮やかな効果を。
ノスタルジックカラーなら、味わい深く落ち着いた効果を。
そういうコントロールを、セットじたいが役割として持っているわけです。
わたしのような色音痴でも、それっぽいカラーで絵を描けるような工夫がすでに施されているのです。
シャープペンシルですから、ケーススタンドから引っこ抜いてノックして芯を出します。
最初はスリーブが引っ込んだ状態です。
これをノックすると、樹脂製のスリーブと芯が顔を出します。
クッション機能があり、強い力をかけると芯がボディ内に一定量引っ込みます。
またスリーブは固定されておらず、筆記による芯の減少に伴ってボディに引っ込んでいきます。芯がスリーブ先端から顔を出さなくなったら、紙面にスリーブをぐっと押しつけると、スリーブが短くなった分だけ芯がまた顔を出します。これにより、ワンノックでけっこう永い時間描き続けることができるような設計になっています。とはいえ、オートマチックシャープではないので、最終的にノックが必要になってきます。
エモットは0.4ミリ樹脂チップ搭載カラーペンのシリーズから始まりましたが、カラーセットはエモットもエモットペンシルも同様のケーススタンドにペンが刺さった状態で販売されています。
この1セットでそれっぽいカラーリングができるという点では、エモットとエモットペンシルも同じコンセプトです。外観も白を基調に綺麗に揃えられていて、並べても違和感がありません。
ただ、エモットがキャップタイプで、ケーススタンドに立てると「先端が上」なのとは逆に、エモットペンシルはノックタイプで、ケーススタンドに立てると「先端が下」。
なので、右手で持つと、ロゴがさかさになってしまいます。
これは三菱鉛筆のデザイナーも悩んだことでしょう。
ケーススタンドに刺さった状態が「正」なのか。
持った状態が「正」なのか。
これがケーススタンドを持たない単体の筆記具であるなら、ロゴの方向が逆であるとして採用されなかったはずです。
あくまでエモットは前シリーズを踏襲し、ケーススタンドに刺さった状態が「正」だと判断されたのですね。
エモットはシャープペンシルですので、ノックキャップを外して芯を補充します。ちゃんと消しゴムも入っていて、それが四角いのがまたにくいですね。本体の四角に合わせているのは無論のこと、細かな修正を狙って角を出しているのだと思います。
細身の製品ですので、替芯の内臓は3本以内に留めておいてください。購入時、本体に装填されている芯は1本です。
その代わり、と言っては何ですが、予備芯はケースに収められて附属しています。シリーズ4色が2本ずつですね。これは別に替芯だけの販売があります。セットに入っているものと全く同じ、シリーズ4色が2本ずつ入った1個のケースです。
替芯のみですと、税込220円ですね。
エモットとエモットペンシルのケーススタンドは外観上そっくりですが、細かな違いもあります。
・エモットは「EMOTT ever fine」と刻印されているが、エモットペンシルは「EMOTT」ロゴのみ。
・先端が尖ったエモットペンシルを入れるため、エモットペンシルのケーススタンドは底に穴が空いており、クリック感が強い。底に穴が空いているのは折れた芯などがケース底に溜まるのを嫌ったか、あるいは芯が伸びた状態でも収納できるようにしたためではないか。
・エモットをエモットペンシルのケーススタンドに立てることはできる(クリックで固定する)が、エモットペンシルをエモットのケースに立ててもクリックしないので固定されない(立てるだけならできるがエモットと高さが揃わない)。
書き心地ですが、硬いです。いわゆる色鉛筆の柔らかさはありません。シャープペンシルの芯として「力をかけても折れたり崩れたりしない」硬度があって、塗り始めはかなり薄く感じます。
ただ、一筆目からがっちり色が出るものもあるので(ここではライトブルーやピンクがそうでした)、最初は目立たないところで描き心地を試してからにしたほうがいいかと思います。
色鉛筆は基本的に「薄く塗り、重ねてだんだんと濃くしていく」ものだと理解しておりますので、硬いことと塗り初期が淡い発色であることは慣れてしまえば問題ありません。
ただ、0.9ミリのシャープペンシルですから、やはり「面を均等に塗る」ことは難しいと言えます。0.9ミリという細さを活かした線画、そこに淡い線を重ねて塗り込んでいく使い方がふさわしいのではないでしょうか。
あとは今後の展開次第ですが、人肌を塗り分ける暖色系カラーや、金属光沢や陰影を司るグレー系カラーが増えてくれることを願っております。
とはいえ、手軽にカラーイラストが描けるエモットペンシルはとてもいい「色鉛筆」です。
先端を削ることなく使え、使用を続けても本体の長さが変わらないこと。
いつまでも先端が細いままで、ぐっと押しても芯先が崩れたりしないこと。
耐水性に優れ、エモットペンシルで描いたあとにエモットで描いても混色しないこと。
消しゴムで消すことができること。
ケーススタンドに立てて置くことで収納も発見も楽なこと。
四角いので、一般的な色鉛筆のように机上で転がらないこと。
さまざまな点で、実によくできています。
今後のカラー展開に期待しております。