たこぶろぐ

ブンボーグA(エース)他故壁氏が、文房具を中心に雑多な趣味を曖昧に語る適当なBlogです。

鉛筆と人間
きだて氏に借りていた『鉛筆と人間』、ようやく読み終えました。



著者ヘンリー・ペトロスキーは米国デューク大学の工学部教授。専門は土木工学です。
ありとあらゆる「技術」に興味関心がある彼は、ふと気がつきます。人間が思いついたものを脳から取り出して指し示すのに「それがないと何も始まらない」はずのものが、技術的に、また歴史的にいっさい語られていないことに。
鉛筆。
あること自体が当たり前で、使い捨てられていく運命のもの。それがないと生まれなかった「技術」があるにも関わらず、道具としても無視され続けてきた存在。
その鉛筆が生まれたのもまた、「技術」の積み重ねです。

本書は1989年に編まれ、1993年に翻訳されました。
この時代、すでに鉛筆は斜陽の時代になっています。
筆記具の中心はボールペンやシャープペンに移り、そういう筆記具すらワープロやパソコンによって活躍の場を失おうとしていた頃──鉛筆の発生から黄金期までを総括する本書の中では、鉛筆は文字通り光り輝いています。
世界各国では、まだ鉛筆の需要は多く存在します。ただ、以前ほどではないのもまた事実です。

消えゆく存在、鉛筆。
しかし、力強い「縁の下の力持ち」であり続ける、鉛筆。
ノスタルジーだけではない「何か」を、「技術」という面から見据えているのが本書の特徴です。
鉛筆の誕生から、現在まで。数百年に及ぶ鉛筆の工学技術の歴史が、この一冊に詰まっています。
日本の鉛筆についての記述がほとんどないのが寂しい限りですが、あとがきで訳者がわずかながらフォローをしています。
『鉛筆と人間・日本編』とか、どなたかお書きになりませんかね。ぜひ読んでみたいのですが。業界内の年表的なものではなく、こうした「技術的な読み物」として。

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