芸術の秋、とよく謳われますよね。
芸術の秋は1918年に雑誌『新潮』が「美術の秋」という言葉を使った記事を掲載したから、という説を聞いたことがあります。これが事実だとしても、新潮社が「美術=秋」を発明したわけではなく、その以前から社会的には「美術=秋」の雰囲気があったのではないかと思っています。
さて美術……芸術の秋ですが、わたしのような文房具好きにとって、「文房具を使って表現できる美術」とはやはり「絵」のことではないかと思うのです。
わたしも絵画からはほど遠いものではありますが、絵を描きます。日常でそこに色を塗るケースは少ないですし、世間に発表するような完成した絵を描くこともないのですが、それでもたまに描いた絵に色を入れたくなることがあります。
いちばん手軽に、描いた絵に色をのせることができるとしたら──色鉛筆でしょうかね。
水彩のように水や筆、パレットなどの道具を用意することなく、さっと手軽に使えること。
カラーペンのように強い色が出ない分、失敗が少なく気軽に使えること。
消しゴムで消せるタイプだと、なお気楽でいいですよね。
そんな「ちょっとした彩色に気軽に使えて並んでいてもおしゃれ」な製品があったら──そう夢想していたところに、三菱鉛筆がドンピシャの製品を出してきました。
それが今回ご紹介する「エモットペンシル」です。
エモットペンシルは、形状で言えば「カラー芯の入ったシャープペンシル」です。0.9ミリの芯はもちろん字を書くこともできますが、それでもやはりこのペンの真骨頂は「色鉛筆として塗る」ことだろうと思うのです。
今回は4色+ケーススタンド+その4色の替芯という構成のセットが3種類出ています。
定価は税込1,100円です。
写真左から順に、
No.1 リフレッシュカラー
・ライトブルー(8)
・グリーン(6)
・バイオレット(12)
・レッド(15)
No.2 トロピカルカラー
・ライトピンク(51)
・ライトグリーン(5)
・オレンジ(4)
・フューシャ(11)
No.3 ノスタルジックカラー
・ブルーブラック(64)
・カーキグリーン(7)
・バーミリオン(16)
・イエロー(2)
となっています。
そもそもわたしは、色彩感覚が雑で、原色を塗りたくって調和しない絵を描きがちな子供でした。
今でもその感覚に変化はなく、カラーを扱うことに恐怖心があります。
そんな人のためでしょうか、エモットペンシルは1セットで「それっぽい絵を描くための基本セット」になっています。
リフレッシュカラーなら、爽やかで癒やしを与える効果を。
トロピカルカラーなら、南国っぽい鮮やかな効果を。
ノスタルジックカラーなら、味わい深く落ち着いた効果を。
そういうコントロールを、セットじたいが役割として持っているわけです。
わたしのような色音痴でも、それっぽいカラーで絵を描けるような工夫がすでに施されているのです。
シャープペンシルですから、ケーススタンドから引っこ抜いてノックして芯を出します。
最初はスリーブが引っ込んだ状態です。
これをノックすると、樹脂製のスリーブと芯が顔を出します。
クッション機能があり、強い力をかけると芯がボディ内に一定量引っ込みます。
またスリーブは固定されておらず、筆記による芯の減少に伴ってボディに引っ込んでいきます。芯がスリーブ先端から顔を出さなくなったら、紙面にスリーブをぐっと押しつけると、スリーブが短くなった分だけ芯がまた顔を出します。これにより、ワンノックでけっこう永い時間描き続けることができるような設計になっています。とはいえ、オートマチックシャープではないので、最終的にノックが必要になってきます。
エモットは0.4ミリ樹脂チップ搭載カラーペンのシリーズから始まりましたが、カラーセットはエモットもエモットペンシルも同様のケーススタンドにペンが刺さった状態で販売されています。
この1セットでそれっぽいカラーリングができるという点では、エモットとエモットペンシルも同じコンセプトです。外観も白を基調に綺麗に揃えられていて、並べても違和感がありません。
ただ、エモットがキャップタイプで、ケーススタンドに立てると「先端が上」なのとは逆に、エモットペンシルはノックタイプで、ケーススタンドに立てると「先端が下」。
なので、右手で持つと、ロゴがさかさになってしまいます。
これは三菱鉛筆のデザイナーも悩んだことでしょう。
ケーススタンドに刺さった状態が「正」なのか。
持った状態が「正」なのか。
これがケーススタンドを持たない単体の筆記具であるなら、ロゴの方向が逆であるとして採用されなかったはずです。
あくまでエモットは前シリーズを踏襲し、ケーススタンドに刺さった状態が「正」だと判断されたのですね。
エモットはシャープペンシルですので、ノックキャップを外して芯を補充します。ちゃんと消しゴムも入っていて、それが四角いのがまたにくいですね。本体の四角に合わせているのは無論のこと、細かな修正を狙って角を出しているのだと思います。
細身の製品ですので、替芯の内臓は3本以内に留めておいてください。購入時、本体に装填されている芯は1本です。
その代わり、と言っては何ですが、予備芯はケースに収められて附属しています。シリーズ4色が2本ずつですね。これは別に替芯だけの販売があります。セットに入っているものと全く同じ、シリーズ4色が2本ずつ入った1個のケースです。
替芯のみですと、税込220円ですね。
エモットとエモットペンシルのケーススタンドは外観上そっくりですが、細かな違いもあります。
・エモットは「EMOTT ever fine」と刻印されているが、エモットペンシルは「EMOTT」ロゴのみ。
・先端が尖ったエモットペンシルを入れるため、エモットペンシルのケーススタンドは底に穴が空いており、クリック感が強い。底に穴が空いているのは折れた芯などがケース底に溜まるのを嫌ったか、あるいは芯が伸びた状態でも収納できるようにしたためではないか。
・エモットをエモットペンシルのケーススタンドに立てることはできる(クリックで固定する)が、エモットペンシルをエモットのケースに立ててもクリックしないので固定されない(立てるだけならできるがエモットと高さが揃わない)。
書き心地ですが、硬いです。いわゆる色鉛筆の柔らかさはありません。シャープペンシルの芯として「力をかけても折れたり崩れたりしない」硬度があって、塗り始めはかなり薄く感じます。
ただ、一筆目からがっちり色が出るものもあるので(ここではライトブルーやピンクがそうでした)、最初は目立たないところで描き心地を試してからにしたほうがいいかと思います。
色鉛筆は基本的に「薄く塗り、重ねてだんだんと濃くしていく」ものだと理解しておりますので、硬いことと塗り初期が淡い発色であることは慣れてしまえば問題ありません。
ただ、0.9ミリのシャープペンシルですから、やはり「面を均等に塗る」ことは難しいと言えます。0.9ミリという細さを活かした線画、そこに淡い線を重ねて塗り込んでいく使い方がふさわしいのではないでしょうか。
あとは今後の展開次第ですが、人肌を塗り分ける暖色系カラーや、金属光沢や陰影を司るグレー系カラーが増えてくれることを願っております。
とはいえ、手軽にカラーイラストが描けるエモットペンシルはとてもいい「色鉛筆」です。
先端を削ることなく使え、使用を続けても本体の長さが変わらないこと。
いつまでも先端が細いままで、ぐっと押しても芯先が崩れたりしないこと。
耐水性に優れ、エモットペンシルで描いたあとにエモットで描いても混色しないこと。
消しゴムで消すことができること。
ケーススタンドに立てて置くことで収納も発見も楽なこと。
四角いので、一般的な色鉛筆のように机上で転がらないこと。
さまざまな点で、実によくできています。
今後のカラー展開に期待しております。
芸術の秋は1918年に雑誌『新潮』が「美術の秋」という言葉を使った記事を掲載したから、という説を聞いたことがあります。これが事実だとしても、新潮社が「美術=秋」を発明したわけではなく、その以前から社会的には「美術=秋」の雰囲気があったのではないかと思っています。
さて美術……芸術の秋ですが、わたしのような文房具好きにとって、「文房具を使って表現できる美術」とはやはり「絵」のことではないかと思うのです。
わたしも絵画からはほど遠いものではありますが、絵を描きます。日常でそこに色を塗るケースは少ないですし、世間に発表するような完成した絵を描くこともないのですが、それでもたまに描いた絵に色を入れたくなることがあります。
いちばん手軽に、描いた絵に色をのせることができるとしたら──色鉛筆でしょうかね。
水彩のように水や筆、パレットなどの道具を用意することなく、さっと手軽に使えること。
カラーペンのように強い色が出ない分、失敗が少なく気軽に使えること。
消しゴムで消せるタイプだと、なお気楽でいいですよね。
そんな「ちょっとした彩色に気軽に使えて並んでいてもおしゃれ」な製品があったら──そう夢想していたところに、三菱鉛筆がドンピシャの製品を出してきました。
それが今回ご紹介する「エモットペンシル」です。
エモットペンシルは、形状で言えば「カラー芯の入ったシャープペンシル」です。0.9ミリの芯はもちろん字を書くこともできますが、それでもやはりこのペンの真骨頂は「色鉛筆として塗る」ことだろうと思うのです。
今回は4色+ケーススタンド+その4色の替芯という構成のセットが3種類出ています。
定価は税込1,100円です。
写真左から順に、
No.1 リフレッシュカラー
・ライトブルー(8)
・グリーン(6)
・バイオレット(12)
・レッド(15)
No.2 トロピカルカラー
・ライトピンク(51)
・ライトグリーン(5)
・オレンジ(4)
・フューシャ(11)
No.3 ノスタルジックカラー
・ブルーブラック(64)
・カーキグリーン(7)
・バーミリオン(16)
・イエロー(2)
となっています。
そもそもわたしは、色彩感覚が雑で、原色を塗りたくって調和しない絵を描きがちな子供でした。
今でもその感覚に変化はなく、カラーを扱うことに恐怖心があります。
そんな人のためでしょうか、エモットペンシルは1セットで「それっぽい絵を描くための基本セット」になっています。
リフレッシュカラーなら、爽やかで癒やしを与える効果を。
トロピカルカラーなら、南国っぽい鮮やかな効果を。
ノスタルジックカラーなら、味わい深く落ち着いた効果を。
そういうコントロールを、セットじたいが役割として持っているわけです。
わたしのような色音痴でも、それっぽいカラーで絵を描けるような工夫がすでに施されているのです。
シャープペンシルですから、ケーススタンドから引っこ抜いてノックして芯を出します。
最初はスリーブが引っ込んだ状態です。
これをノックすると、樹脂製のスリーブと芯が顔を出します。
クッション機能があり、強い力をかけると芯がボディ内に一定量引っ込みます。
またスリーブは固定されておらず、筆記による芯の減少に伴ってボディに引っ込んでいきます。芯がスリーブ先端から顔を出さなくなったら、紙面にスリーブをぐっと押しつけると、スリーブが短くなった分だけ芯がまた顔を出します。これにより、ワンノックでけっこう永い時間描き続けることができるような設計になっています。とはいえ、オートマチックシャープではないので、最終的にノックが必要になってきます。
エモットは0.4ミリ樹脂チップ搭載カラーペンのシリーズから始まりましたが、カラーセットはエモットもエモットペンシルも同様のケーススタンドにペンが刺さった状態で販売されています。
この1セットでそれっぽいカラーリングができるという点では、エモットとエモットペンシルも同じコンセプトです。外観も白を基調に綺麗に揃えられていて、並べても違和感がありません。
ただ、エモットがキャップタイプで、ケーススタンドに立てると「先端が上」なのとは逆に、エモットペンシルはノックタイプで、ケーススタンドに立てると「先端が下」。
なので、右手で持つと、ロゴがさかさになってしまいます。
これは三菱鉛筆のデザイナーも悩んだことでしょう。
ケーススタンドに刺さった状態が「正」なのか。
持った状態が「正」なのか。
これがケーススタンドを持たない単体の筆記具であるなら、ロゴの方向が逆であるとして採用されなかったはずです。
あくまでエモットは前シリーズを踏襲し、ケーススタンドに刺さった状態が「正」だと判断されたのですね。
エモットはシャープペンシルですので、ノックキャップを外して芯を補充します。ちゃんと消しゴムも入っていて、それが四角いのがまたにくいですね。本体の四角に合わせているのは無論のこと、細かな修正を狙って角を出しているのだと思います。
細身の製品ですので、替芯の内臓は3本以内に留めておいてください。購入時、本体に装填されている芯は1本です。
その代わり、と言っては何ですが、予備芯はケースに収められて附属しています。シリーズ4色が2本ずつですね。これは別に替芯だけの販売があります。セットに入っているものと全く同じ、シリーズ4色が2本ずつ入った1個のケースです。
替芯のみですと、税込220円ですね。
エモットとエモットペンシルのケーススタンドは外観上そっくりですが、細かな違いもあります。
・エモットは「EMOTT ever fine」と刻印されているが、エモットペンシルは「EMOTT」ロゴのみ。
・先端が尖ったエモットペンシルを入れるため、エモットペンシルのケーススタンドは底に穴が空いており、クリック感が強い。底に穴が空いているのは折れた芯などがケース底に溜まるのを嫌ったか、あるいは芯が伸びた状態でも収納できるようにしたためではないか。
・エモットをエモットペンシルのケーススタンドに立てることはできる(クリックで固定する)が、エモットペンシルをエモットのケースに立ててもクリックしないので固定されない(立てるだけならできるがエモットと高さが揃わない)。
書き心地ですが、硬いです。いわゆる色鉛筆の柔らかさはありません。シャープペンシルの芯として「力をかけても折れたり崩れたりしない」硬度があって、塗り始めはかなり薄く感じます。
ただ、一筆目からがっちり色が出るものもあるので(ここではライトブルーやピンクがそうでした)、最初は目立たないところで描き心地を試してからにしたほうがいいかと思います。
色鉛筆は基本的に「薄く塗り、重ねてだんだんと濃くしていく」ものだと理解しておりますので、硬いことと塗り初期が淡い発色であることは慣れてしまえば問題ありません。
ただ、0.9ミリのシャープペンシルですから、やはり「面を均等に塗る」ことは難しいと言えます。0.9ミリという細さを活かした線画、そこに淡い線を重ねて塗り込んでいく使い方がふさわしいのではないでしょうか。
あとは今後の展開次第ですが、人肌を塗り分ける暖色系カラーや、金属光沢や陰影を司るグレー系カラーが増えてくれることを願っております。
とはいえ、手軽にカラーイラストが描けるエモットペンシルはとてもいい「色鉛筆」です。
先端を削ることなく使え、使用を続けても本体の長さが変わらないこと。
いつまでも先端が細いままで、ぐっと押しても芯先が崩れたりしないこと。
耐水性に優れ、エモットペンシルで描いたあとにエモットで描いても混色しないこと。
消しゴムで消すことができること。
ケーススタンドに立てて置くことで収納も発見も楽なこと。
四角いので、一般的な色鉛筆のように机上で転がらないこと。
さまざまな点で、実によくできています。
今後のカラー展開に期待しております。
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