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2018年4月6日深夜よりテレビ東京にて放映が開始された、ドラマ『宮本から君へ』。
原作である『宮本から君へ』は、1990年より講談社『モーニング』誌に掲載された漫画です。
1994年までの4年間連載され、コミックスは全12巻。
主人公・宮本浩は文具メーカー・マルキタの新入社員。仕事が上手くいかない毎日を、上司や同僚たちと感情豊かに過ごしています。そこに、好きになった女性が現れ──宮本の不器用な苦闘が描かれる、人生訓にあふれた名作です。
と、ここまで書いておいて、さきに白状しておきます。
わたし、『宮本から君へ』はほぼ未読です。
第一巻しか読んでいません。
当時から、苦手だったのです。
主人公が青臭くて、恋愛や仕事が上手くいかなくて、上司や同僚と飲んだくれたり暴れたりするのが、どうしても駄目だったのです。
なぜかと言いますと。
当時のわたしに完全にダブるからです。
わたしも1990年に就職し、宮本と同じように営業マンとしての仕事に就きました。
毎日が苦闘です。
先輩は何も教えてくれません。ただ呑んで先輩風を吹かし愚痴を垂れるばかり。楽しいと言えば楽しいのですが、営業のノウハウどころかイロハすら教えてもらえません。
宮本が文房具店に営業に行くときの「こんにちはー、○○です!」という挨拶が、まるっきりわたしと同じだったのです(わたしは「まいどー、○○です!」でしたけど)。
ただ大声で挨拶し、パンフレットでひととおりの新製品を紹介してしまうともうそれ以上の会話は弾まず、海千山千の取引先とはまったくスウィングしない毎日。
その頃、彼女はいませんでした。宮本と違って会社の寮から通っていたので(しかも男性同期5人で朝一斉に!)女性との出逢いもないですし、他の同期はみな仕事もプライベートも充実しているように見えました。
呑みに行けば仕事のこと、彼女のこと、遊びのこと。大学の時とは違う、自分の今までの生き方考え方が通用せず悩んでばかりの日々。
そう、わたしはリアル宮本だったのです。
ドラマ『宮本から君へ』を観て、はじめて原作漫画を読んだときと同じ息苦しさを憶えました。
ドラマ、本当に「漫画の実写化」なのです。シーンこそ違えど、ほぼ原作通りの運びですし、そこで悩み苦しみ怯え暴れる宮本は漫画通りで、まさしく90年代初頭の自分の姿です。
シーンのいくつかを観ることができず、飛ばしてしまった部分があります。
あ、別に「エグい」とか「怖い」とかそういうことではないので、ほかの皆様はぜひじっくりご覧頂きたいと思います。ドラマとしても一級品の密度ですので。
いまのところ、テレビ東京の観返しサイト「ネットもテレ東」で観返すことが可能なようです(2018年4月7日の執筆時現在、第一話を観ることができます)。
で、ドラマ版を観ていて、気になったのはロケ地です。
『宮本から君へ』のメイン舞台である文具メーカー・マルキタは、作者である新井英樹さんが就職し、その後退職された文房具メーカーセキセイがモデルになっています。
漫画でも背景に出てくるマルキタはセキセイの東京本社ビルでした。
今回のドラマ版でも──
きっちり、セキセイ東京本社でロケが行われています(ドラマ版では看板が「マルキタ」に代わっています)。主人公たちが煙草喫ってた屋上もここですよね。たぶん。
いままで文房具メーカーで働く主人公のドラマってあったと思うのですが、外観がまんま実在のメーカーだった例ってありましたっけ。わたしは寡聞にして知らないのですが。
で、ドラマの中で宮本が営業に向かう文房具店があります。
原作では複数の店舗が出てきますが、ドラマではそれを1店に集約しています。
オフィストゥデイ広文堂です。
土曜はお休みでした……来週会社帰りに再チャレンジ、と思ったのですが、平日でも18時30分までの営業ということで、ちょっと訪問は難しいかな……。
あと、ドラマのセリフで宮本が在庫確認する「Y-56B」ですが、ちゃんとセキセイで実在するクリップボードの品番です。
これも入手しようと今日、数店を回ったのですが残念ながら置いてある文房具店には行き当たらず。仕方なくAmazonで注文したら「3〜5週間後です」って返事が……。
さて、来週の宮本はどんな文房具店に赴くのでしょうか。
たいへん楽しみです。
というわけで、来週以降も継続して視聴しますので、そろそろ腹をくくって第二巻以降を買わないとですよね。ホント。 -
たまたまネットを検索していたら、自分の趣味興味の範疇外の製品の情報が飛び込んで参りまして。
「うそやん、そんなん信じられへん」
とばかりにネット通販。
手元に来るまで到底信用できません。
Yahoo!ショッピングでポチったのがおとといの夜。
そして本日、頼んだブツが届きました。
これです。
そう、わたしが愛してやまない消しゴム「keep」です。
でも、この写真だと、何が「信じられない」のか分かりませんよね。
角度を変えてみましょう。
立ててみると、異様な感じがわかっていただけるのではないでしょうか。
横倒しだと単なる消しゴム(のスリーブ部分)でしかなかった物体が、立ててみると随分複雑な構想になっているのがお分かりいただけるかと思います。
そう、これは消しゴムではありません。
keepのグッズなのです。
正しくは、iQOS 2.4ホワイト専用のケースです。
煙草を吸わないわたしには全く不要な代物なのです。
でも。
keepファンとしては、買っておかねばなりませんよね。
そもそも、keepっていう消しゴムそのものがマイナーな存在なのに、そのロゴを使ったiQOSケースがあるってこと自体がレアすぎます。
普段使いのkeep(60円タイプ)と並べてみました。
有り体にいえば 、煙草の箱の大きさですよね。それ以上でもそれ以下でもない。
そして、他の用途には転用できなさそうな大きさと構造でもあります。
ただ、ファンとして嬉しいのは、keepのロゴに対し右側が開いている(iQOSを使用する場合、可動する蓋側が飛び出る)こと。白いiQOSケースの飛び出した蓋部分が、ちゃんと「keepロゴの右側に消しゴムが出る」keepの特徴を押さえて設計されている。これはすばらしい。
とはいえ、今からiQOSを買うことは絶対にない、非喫煙者であるわたし。
どうしようかな……何に使えばいいかな……。 -
2017年7月のISOTにて、ひとつのかばんと出逢いました。
通学する中学生の身体を守るバッグ、その名も「ラクサック」。
毎日10キロを超える教科書類を持ち歩く彼ら彼女らの、未だ成長期の不安定な身体を守る工夫が施された画期的な製品でした。
ストラップは首の後ろで一体化され、バッグの中央には持ち上げる際に便利な持ち手があります。
教科書類はバッグ内で揺れないように、中でブックストラップによって固定されます。
腰に当たる位置にはバックパッドが挟まれ、衝撃を最低限に抑えます。
7月にプロトタイプが公開され、5ヶ月後の12月。
秋葉原にて、メーカーである株式会社フットマークのセミナーが開催されました。
ついにラクサックが発売になるのです。
ここで話を聴いた後、小生もラクサックを購入し、実際に一ヶ月ほど持ち歩いてみました。
これが発売されたラクサックです。
一枚目の、ISOTで展示されたバージョンと異なっている部分があるの、お判りいただけますでしょうか。
まず、全体的にやや硬くなり、置いたときにふにゃっとならない構造となりました。
続いて、反射材の素材が変わり、もっとはっきり反射するようになりました。
そして背面にある平置きの際に使用する持ち上げハンドルが、1ループから3ループに変更されました。
3つめのハンドル形状変更については理由が判らなかったので、セミナーの時に係の方にお伺いしましたところ、「ハンドルが大きいと、不意の事故や悪戯などで背後から引っ張られる可能性がある」からだそうです。なるほど、改良された3ループなら、背後から引っ張ろうにもすぐには持つことができません。
内部のブックストラップは健在です。これで内容物を揺れないように固定するだけで、肩や腰への影響はかなり軽減されます。
大人が背負っても特に違和感のないデザインですが、「中学生が、教室に着いたら内容物を総て出す」ことを重視したバッグですので、大人が欲しがる「PC用衝撃吸収ポケット」「折りたたみ傘ポケット」「充電のためのケーブル穴」などは一切ありません。
それでも、フラップのメッシュポケットやサイドポケット、フロントのチャックポケットやインナーポケットなど、収納も工夫すればまったく不自由なく日常使いが可能です。
製品自体に防水性能はありませんが、底面にはレインカバーが内蔵されており、これが取り外せない(紛失の心配がない)というのも学生用ならではかと。
中学生だけでなく、大人が使っても違和感のない本製品ですが、ここはやはりお父さんが率先して使用し、その良さをお子様に伝える、という流れがよろしいかと思います。
実際のところ、小生も通勤、プライベート、まんが大会の搬入と、ライト級からヘビー級まで様々な使い方をこの一ヶ月して参りましたが、快適に使うことができました。
特にブックストラップによる揺れの解消とショルダーストラップの密着感、腰のバックパッドが効いており、10キロを遙かに超えるまんが大会の搬入搬出も楽にこなすことができました。中で荷物が揺れないことがこんなに有効だとは!
小物の多い大人は、ブックストラップの中にスタンドポケット(A5横)を仕込んでおいて、ベルトの着脱なしに上から物の出し入れをするのがよさそうです。
定価は税込で10,260円と、決して安い買い物ではありません。
ただ、強度と実用を兼ねたメーカー製バックパックは、逆にこの価格では買えないことが多いと思います。
学校指定のかばんしか持ち込めない学校もあるかとは思いますが、中学生のお子様をお持ちの皆様、またこれから中学生になるお子様のいらっしゃるご家庭で、いちど検討してみてはいかがでしょうか。
小生は、いま小学5年生の息子の中学進学時に、ラクサックを提案してみるつもりです。学校指定の壁があって持ち込めない場合は、プライベートで彼の身体を守るために使わせたいと考えています。 -
旧年中はたいへんお世話になりました。
本年もよろしくお願い申し上げます。
ブログが途切れて半年ほど経過してしまいました。
日常のリソースを振り分ける先がひとつ増えてしまった結果です。
昨年7月より、株式会社モリイチ京橋店のホームページ『森市文具概論』にて、イラストコラム「ブンボーグ・メモリーズ」を隔週掲載させていただいております。
当初は慣れないこともあって、週末の大半を記事作成で奪われてしまいました。
また途中よりイラストが2枚掲載に変わり、これも慣れるまでは苦労をいたしました。
ただ、それもずいぶん慣れてきております。
そろそろ本家たこぶろぐも復活しないといけませんよね。
今年の抱負は「まじめに生きる」です。
毎年言っておりますが、今年こそは本当に、命懸けでまじめに生きようと決心しております。
たこぶろぐもしかり。
文房具啓蒙活動もしかり。
家族との生活もしかり。
本職もしかり。
気合い入れて行きますよ。 -
付箋って何だろう。
そう思ったこと、ありませんか。
ふ せん【付箋・附箋】
種々の用件などを書きしるし、また目的・備忘のために。貼り付ける小さな紙片。
(『スーパー大辞林3.0』Version4.1.1より)
ふーせん【付箋・附箋】
①疑問・不審または、その他の必要なことを書いて、はりつける小さな紙片。また、目的のためにはりつける紙。不審紙。
(『精選版 日本国語大事典』Version1.0より)
辞書で引いても、自分の思ったとおりの答えが書いてあります。
でも、1980年にアメリカでスリーエム社がポスト・イットを発明し、1983年からは日本でも発売され、それ以降──付箋と言えばポスト・イット、あるいはそれを模した「貼って剥がせる粘着剤のついた細長い紙片」という意味になってしまいましたよね。
つまり、小生の疑問はこうです。
「ポスト・イット以前の『本来の付箋』ってどんなの?」
ポスト・イットの歴史を知るために、スリーエムのホームページに行ってみました。
そこには、日本に上陸したときのエピソードも載っています。
導入時、日本ではポスト・イットはなかなか売れなかったと言います。アメリカからやってきたポスト・イットのサイズは日本人にとって「どう使っていいか判らない」大きさだったようです。
そこで官公庁や役所で多く使用されていた「日本式の、端を赤く塗った付箋紙」タイプのポスト・イットを日本独自に作成、これがヒットし定着に繋がったというのです。
これですよね。
日本式の、端を赤く塗った付箋紙タイプ。
最初、この幅の製品はポスト・イットにはなかったのです。
つまり当初、ポスト・イットは「付箋紙ではなかった」、と。
細長いものが、付箋紙。
ポスト・イットは、貼って剥がせるメモ用紙。
最初の疑問に戻ります。
「じゃ、その『日本式の、端を赤く塗った付箋紙』ってどんなの?」
しかし、どんなにググっても、ポスト・イット以前に「付箋」と呼ばれていたものの情報は見つかりません。
Twitterで情報を求め、少しずつ的を絞り、そして──
ようやく辿り着きました。
手前がポスト・イット、奥が「日本式の、端を赤く塗った付箋紙」です。
表紙をめくると、天糊で留められた付箋本体が出てきます。
奥が赤く塗られていますね。
日本の付箋紙 92ミリ×30ミリ
ポスト・イットふせん 75ミリ×25ミリ
サンプルがこれ一個しかないので、「日本式の、端を赤く塗った付箋紙」が皆この大きさなのかは判りません。ただ、ポスト・イットふせんは縦方向に短いものの、全体のフォルムはいい線いってるような気がします。これなら付箋紙代わりになります。
この当時の付箋紙には、糊がついているタイプとないタイプがあったそうです。
入手した付箋紙の裏側を見ると、紙の端にわずかに糊がついています。
嘗めて貼る、切手と同じタイプの糊ですね。
これで挟んだ相手の紙に固定していたようです。
糊の幅が4ミリ程度しかないので、剥がそうと思えば簡単に剥がせたのではないでしょうか。
しかし、それでも糊は糊。貼られた側の紙面に影響があったことは想像に難くありません。
そういう意味では、ポスト・イットふせんは画期的でした。
なにせ嘗めなくてもいいし、貼ってはがしてまた貼ることができるし、紙への汚損は最小限に抑えることができます。
これは売れますよね。確かに。
本サンプルの提供にあたっては、古文具蒐集家のたいみちさんにご協力いただきました。
たいみちさん、貴重なサンプルをありがとうございました。
疑問が解消できて小生は実にすっきりした気分です。
今後はこの「日本式の、端を赤く塗った付箋紙」も、仕事道具のラインナップに加えていきたいと思います。
いやあ、文房具にも歴史あり、ですね。
歴史ありと言えば。
小生、老舗文房具店モリイチ京橋店さんのホームページにて、1980年代を中心としたむかしの文房具を振り返る「ブンボーグ・メモリーズ」というタイトルのイラストコラムを連載開始いたしました。
第一回は、文房具の歴史を変えた画期的な製品、プラスのチームデミを。
第二回は、電子文具という「90年代に向けての未来」を具現化した、パイロットのアメデックスを。
第三回以降も、今はない、個性的だった文房具を紹介していく予定です。
もしよろしければ、そちらもご覧いただければ幸いです。