たこぶろぐ

ブンボーグA(エース)他故壁氏が、文房具を中心に雑多な趣味を曖昧に語る適当なBlogです。

【ブンボーグ・メモリーズ】第15回:パンチ&テープ(サンスター文具)/光奇新(カシオ計算機)
1980年代の懐かしい文房具を語り尽くす謎の企画。
今回は禁断の「買わなかった文房具」のお話。

初出:2018年1月19日

 この連載を始めるに当たって、読み返している雑誌がある。
 1988(昭和63)年4月17日から1992(平成4)年1月17日の間、通巻58号まで発行された、日本で唯一の「文房具専門月刊雑誌」──ナツメ社の『BTOOL(ビー・ツール・マガジン)』だ。

 1980年代末期の文房具と電子文具、そしてワープロブームの貴重な資料として辞書のように引くことが多いのだが、憶えていなかったことや、当時気づいていなかったことを今さらながらに気づかさたりして、読み返して飽きがこない。
 この4年10ヶ月間は文房具にとっても実に重要な時期で、オフィスにOA化の波がやってきて、文房具側も「OA対応」を謳わざるを得なくなった頃にあたる。またOA化の波もワープロからパソコンに、ダイナミックに変動していく期間でもある。事実、『BTOOL』は1992年2月以降、『DOS MAGAZINE』としてパソコン誌に生まれ変わっているのだ。

 そんな激動の時代を記録してきた本誌から、今回は「今なら絶対買うだろうけど、当時わたしが買わなかった文房具」をピックアップしてみよう。

・サンスター文具「パンチ&テープ」

 その名の通り、2穴パンチとテープカッターを合体させた製品だ。
 パンチ部分の穿孔能力はコピー用28枚と、事務用として充分な能力を持っている。ハンドルの中央に顔を出しているテープカッター部分は小巻テープ専用のもので、12ミリから18ミリまでの幅のテープが適合する。
 このデザインにおける一番の効能は「小巻テープカッターに居場所をつくり、常にパンチにテープをセットしておけること」だろうと思う。デザイン上うまく配置していると思うし、何よりハンドルの湾曲が美しい。

 だが、パンチを実際に押したときにどれだけテープカッター部分が邪魔になるのかがうまく想像できない。
 テープを引っ張り出す際にハンドルは邪魔にならないだろうか。
 あと、重量スペックが判らないが、テープを引っ張り出すときに動かないほど本体は重いのだろうか。それともやっぱりハンドルに手を掛けないとテープを引き出すことはできないのだろうか。

 使い勝手に疑問はあるものの、見かけたら間違いなく買っていただろう。実に映えるデザインだと思うから。
 ではなぜ買わなかったかと言うと、当時のわたしの目が節穴だったからだ。店頭にあっても見えていなかったのだろう。実に口惜しい。
 定価は1,800円。大型パンチと小型テープカッターを合わせて買うのと大差ない価格である。
 セロハンテープの使用頻度は多くないかもしれないが、当時ならメンディングテープをつけることも考えただろうし、今ならマスキングテープを装填してもいい。メモックロールをつけるのも面白いかもしれない。

 現在はパンチもテープカッターも当時より使い勝手が向上しているので、そういったハイグレードな21世紀版が出たら嬉しい製品でもある。
 その際にはぜひ軽く穿孔できるパワーアシスト機構とセンターゲージを内蔵してもらいたい。テープのカッター部分も、フラットに軽く切ることのできる工夫をしていただけると、最強リニューアル版「パンチ&テープ」が誕生するのではないだろうか。
 
・カシオ計算機「フラッシュコピー光奇新(こうきしん)」

 文房具じゃないという気もするが、『BTOOL』に載っている時点で、本稿では文房具と認識する。
 フラッシュを使った簡易印刷機、と言えばいいか。
 これも当時、目に入っていなかった。
 プリントゴッコ(理想科学工業製の簡易製版機能つき小型印刷機)すら持っていなかったわたしは、どうもこういう印刷系の道具にはあまり興味を持っていなかったようである。

 フラッシュコピー光奇新で印刷を行うためには、まず判を作成する必要がある。
 カーボンを含む原稿を用意し、フィルム判に載せ内蔵フラッシュを焚くことで、重ねて載せたフィルム判にインクの通る穴を開けるのだ。
 続いてそこにインクリボンをセットしてフラッシュを焚くと、判の通りにインクが融けて転写される。
「フラッシュコピー」とは、「フラッシュを使って判をコピーする」ことと、「フラッシュを使ってコピーされた絵文字を印刷する」という二重の意味が込められているのだ。

 表面が滑らかなものでインクが乗りやすいものであれば、紙、アクリル板、木材、ビニール製品など、かなり多岐にわたって印刷が可能である。
 プリントゴッコは、使い捨てのフラッシュを焚いて判を作成し、そこに専用のインクをチューブから捻り出して載せ、紙に印刷する装置だった。
 判を作る過程は似ているが、プリント方法そのものはまったく異なるわけだ。

 光奇新の転写サイズは、カタログスペックで52ミリ×28ミリ。ほぼ名刺サイズで、葉書サイズを印刷することはできない。またインクカートリッジも5色しか用意されていない。判を代えれば5色を重ねる多重印刷も不可能ではないが、いわゆるカラフルな印刷はプリントゴッコのほうが得意だと言える。
 光奇新がプリントゴッコに勝る点があるとしたら、サーマルプリンタ同様に金色と銀色のリボンが使える点と、セットされたペンシルホルダーによって鉛筆や棒状のものに印字ができる点だろう。
 今のわたしなら、この「鉛筆に印字できる」という機能だけで光奇新を買っていると思う。定価は7,800円と、当時でもがんばれば出せた金額である。
 全くもって当時の自分を叱り飛ばしてやりたい気分である。なぜ目に入らなかったのかと。なぜ買わなかったのかと。

 文房具も一期一会である。出逢わなかったことを悔やんでも始まらないが、常にアンテナは張っておきたいものである。

【後日譚】
連載を続けるにあたって、最も困ったのは「ネタの枯渇問題」でした。
もちろん書きたい文房具は山ほどあるのですが、問題はイラストです。
記事は想い出を語るだけですから現物が手許になくても一向に構いませんが、イラストはそうも行きません。
この回が第15回ですが、その前の14エピソードで「手許に現物がない」ものは、
第2回 アメデックス
第3回 ジョッター
のみ。
アメデックスは前掲の「ビー・ツール・マガジン」に記事があり、ファイロファックスのジョッターもインターネットで検索すれば画像が出てきます。
つまり、第14回までの記事では、イラストを描くのに困るシーンはなかったのです。
ところが、今後すべてのネタに現物あるいは資料が揃うとは思えません。
手許にないものは極力ヤフオク等で探していたのですが、入手できないものも多かったのです。
──ちょっと水増ししておきたい。
わたしは年に一度だけ、こうした「買わなかった文房具」を「ビー・ツール・マガジン」から探して記事にすることを思いつきました。
買っていないのですから、もちろん使ったことはなく、本連載の趣旨からは外れてしまうわけですが、それでも当時の空気は伝わるのではないかと──そういうことで押し切った記憶があります。

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