たこぶろぐ

ブンボーグA(エース)他故壁氏が、文房具を中心に雑多な趣味を曖昧に語る適当なBlogです。

付箋って何だろう
付箋って何だろう。
そう思ったこと、ありませんか。

ふ せん【付箋・附箋】
種々の用件などを書きしるし、また目的・備忘のために。貼り付ける小さな紙片。
(『スーパー大辞林3.0』Version4.1.1より)

ふーせん【付箋・附箋】
①疑問・不審または、その他の必要なことを書いて、はりつける小さな紙片。また、目的のためにはりつける紙。不審紙。
(『精選版 日本国語大事典』Version1.0より)

辞書で引いても、自分の思ったとおりの答えが書いてあります。
でも、1980年にアメリカでスリーエム社がポスト・イットを発明し、1983年からは日本でも発売され、それ以降──付箋と言えばポスト・イット、あるいはそれを模した「貼って剥がせる粘着剤のついた細長い紙片」という意味になってしまいましたよね。
つまり、小生の疑問はこうです。

「ポスト・イット以前の『本来の付箋』ってどんなの?」

ポスト・イットの歴史を知るために、スリーエムのホームページに行ってみました。
そこには、日本に上陸したときのエピソードも載っています。

導入時、日本ではポスト・イットはなかなか売れなかったと言います。アメリカからやってきたポスト・イットのサイズは日本人にとって「どう使っていいか判らない」大きさだったようです。
そこで官公庁や役所で多く使用されていた「日本式の、端を赤く塗った付箋紙」タイプのポスト・イットを日本独自に作成、これがヒットし定着に繋がったというのです。



これですよね。
日本式の、端を赤く塗った付箋紙タイプ。
最初、この幅の製品はポスト・イットにはなかったのです。
つまり当初、ポスト・イットは「付箋紙ではなかった」、と。
細長いものが、付箋紙。
ポスト・イットは、貼って剥がせるメモ用紙。

最初の疑問に戻ります。
「じゃ、その『日本式の、端を赤く塗った付箋紙』ってどんなの?」

しかし、どんなにググっても、ポスト・イット以前に「付箋」と呼ばれていたものの情報は見つかりません。
Twitterで情報を求め、少しずつ的を絞り、そして──



ようやく辿り着きました。
手前がポスト・イット、奥が「日本式の、端を赤く塗った付箋紙」です。



表紙をめくると、天糊で留められた付箋本体が出てきます。
奥が赤く塗られていますね。



日本の付箋紙 92ミリ×30ミリ
ポスト・イットふせん 75ミリ×25ミリ

サンプルがこれ一個しかないので、「日本式の、端を赤く塗った付箋紙」が皆この大きさなのかは判りません。ただ、ポスト・イットふせんは縦方向に短いものの、全体のフォルムはいい線いってるような気がします。これなら付箋紙代わりになります。



この当時の付箋紙には、糊がついているタイプとないタイプがあったそうです。
入手した付箋紙の裏側を見ると、紙の端にわずかに糊がついています。
嘗めて貼る、切手と同じタイプの糊ですね。
これで挟んだ相手の紙に固定していたようです。
糊の幅が4ミリ程度しかないので、剥がそうと思えば簡単に剥がせたのではないでしょうか。
しかし、それでも糊は糊。貼られた側の紙面に影響があったことは想像に難くありません。
そういう意味では、ポスト・イットふせんは画期的でした。
なにせ嘗めなくてもいいし、貼ってはがしてまた貼ることができるし、紙への汚損は最小限に抑えることができます。
これは売れますよね。確かに。

本サンプルの提供にあたっては、古文具蒐集家のたいみちさんにご協力いただきました。
たいみちさん、貴重なサンプルをありがとうございました。
疑問が解消できて小生は実にすっきりした気分です。
今後はこの「日本式の、端を赤く塗った付箋紙」も、仕事道具のラインナップに加えていきたいと思います。
いやあ、文房具にも歴史あり、ですね。

歴史ありと言えば。
小生、老舗文房具店モリイチ京橋店さんのホームページにて、1980年代を中心としたむかしの文房具を振り返る「ブンボーグ・メモリーズ」というタイトルのイラストコラムを連載開始いたしました。
第一回は、文房具の歴史を変えた画期的な製品、プラスのチームデミを。
第二回は、電子文具という「90年代に向けての未来」を具現化した、パイロットのアメデックスを。
第三回以降も、今はない、個性的だった文房具を紹介していく予定です。
もしよろしければ、そちらもご覧いただければ幸いです。

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コメント

1. 無題

たこさんが付箋の歴史とポストイットの違いを知らなかったなんてビックリ!先日、文紙フェアで何も知らない3Mのお兄さんに同じ話をしてきたところです。

Re:無題

>たこさんが付箋の歴史とポストイットの違いを知らなかったなんてビックリ!先日、文紙フェアで何も知らない3Mのお兄さんに同じ話をしてきたところです。

いやあ、恥ずかしながら詳細は知らなかったですね。
実は「付箋」そのものを社会人になるまで使ったことがなかったですし(大学生の時代にポスト・イットノートは使っていましたが「付箋」としての使い方はしていませんでした)、平成2年に社会人になってからの「付箋」はすでにすべてポスト・イットふせんでした。
やはり生き証人の知識には到底敵わない、という思いが実に強いですね。というか、スリーエムの方は知っていてほしい事実ではありますが……
今回は実にためになりました。やはり現物を手にすると違いますね。これが歴史なのか、と。
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