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システム手帳を語るとき、おっさんの目は妖しく輝くのです。
「ぼうや、知らないだろう。システム手帳がものすごく流行った時代のことを……」
こういうおっさんに出会ったら、すぐお逃げなさい。
そこから先は昔語りと言う名の地獄ですよ……。
というわけで、日本で初めてバイブルサイズシステム手帳を革バインダーからリフィルまでトータルにリリースし、当時のナウでヤングな趣味人たちに旋風を巻き起こしたのが、ノックスブレインというブランドでした。
創立1985年。昭和60年ですね。戦隊なら『電撃戦隊チェンジマン』、メタルヒーローなら『巨獣特捜ジャスピオン』、不思議コメディなら『勝手に! カミタマン』の時代です。
それから30年。
ファイロファックスに始まって一世を風靡した「ビジネスマンならシステム手帳」時代が90年代のバブル崩壊と共に徐々に萎む中、ノックスブレインは決して諦めませんでした。
時代に合わせ、ビジネスと革小物、生活と文房具をデザインし、ブランドとしての地位を確固たるものにしていきます。
ただ、いかんせんシステム手帳の旬は過ぎていました。
世の中にはいろいろ便利なガジェットが、そして30年前では想像も出来ないほどのデジタル機器の普及が起こりました。
文房具の進化も目覚ましく、リーマンショック以降は自分でお金を払って文房具を吟味するのが当然になっていきます。システム手帳の「システム」の部分はパソコンやデジタルガジェットに、「手帳」の部分は細分化された様々な手帳やノートに吸収されてしまいました。
重厚で、高価で、アナログで、使いこなすにはノウハウのいるシステム手帳は、この2015年を生き延びることができるのでしょうか。
その答えの一つが、ことしノックスブレイン30年を経て生み出された新コンセプトのシステム手帳、「ルフト」です。
ルフトはバックプレート、リング、革の3点でのみ構成された、薄型軽量のシンプルなシステム手帳です。
サイズはバイブルサイズとノックスブレイン独自のナローサイズ。
小生はバイブルサイズを購入しました。
リング罫は11ミリ。
革は仕上げで三種類を選べるのですが、今回は銀座伊東屋で行われた「ルフトカスタマイズイベント」での限定革である藍染をチョイス。
バックプレートも限定でのみ入手可能なシルバーで組み上げてもらいました。
表2と表3には、イベント限定のスタンプを自分で押すことができました。
もっと派手なスタンプもたくさんあったのですが、まあ自分のセンスに自信がない小生は簡単に一箇所ずつです。
いいです。
これは実にいい。
自分の中でかなり萎んでいたシステム手帳というものの存在を、一気に普段使いの場まで浮上させてくれる存在です。
まず、薄い。
そして軽い。
開くと、机の上にぺたっと平たく開きます。
革は柔らかく、張りがあり、手に馴染み、高級感があります。でも、それだけです。
邪魔なものは何もなし。
書くための、ただそれだけのためのシステム手帳。
「システム」の部分を自ら削ぎ落とすことを許すデザイン。
本当に、必要なアクセサリーはリフターくらいです。
とりあえず、今はうちにあった他社のリフターとバンドリフターを入れています。
ああ、リフィルも他社製ですね。これは後で、ノックスの2ミリ方眼レフィルを買おうと思っていますが……。
愛用の逸品となりそうです。
しばらく、ジブン手帳miniといっしょに持ち歩いてみましょう。
さて。
ここからはおまけです。
カスタムイベントでは、混んでなければ30分ほどでパーツ状態から製品を組んでくれます。
待っている間に、まあ店頭にあれば買いますよねこれは。
伊東屋の本です。
本もそうですが、伊東屋の店頭で買うとこれがもらえます。
伊東屋のメルシー券を模ったメタルしおりです。
「ぼうや、知らないだろう。伊東屋にメルシー券という割引券があった時代のことを……」
ああ、またおっさんが現れましたね。
お逃げなさい、お若いの! -
今夏のISOTで話題となった、静電気で貼りつくフィルム付箋「マグネティックノート」。
ようやく一般販売になったので、購入してまいりました。
とりあえず、ちいさいものを購入しました。
Sサイズ(70mm×50mm)で100枚入り580円(税抜)でした。
おう……思ったより高価ですね……。
ホームページを見る限り、素材は「独自の特許取得済の静電ポリプロピレンフィルム製」ということで、確かに薄いフィルムが静電気で積層されています。
小生はふだん付箋はピンク・イエロー・ブルーの順で消費していくのですが、たまたま訪れたロフト池袋店ではSサイズのブルーが売り切れておりまして、代わりに紙の付箋ではありえない透明タイプを購入しています。
透明タイプはカラーのマグネティックとは触り心地が異なります。カラーのものは表面はさらさら、裏面はつるつるしているのですが、透明のものはもちもちで、厚さも異なります。
手許にある筆記具で、表面の書き心地を試してみました。
ただ、透明タイプとカラータイプでは表面処理が異なるので、この写真だけでは説明不足ですね。
【透明タイプの場合】
推奨できるペン:水拭きマッキー
書けるペン:油性マーカー
乾きが遅く実用的でないペン:万年筆
書けないペン:鉛筆、油性ボールペン、水性ボールペン、ゲルインキボールペン
【カラータイプの場合】
推奨できるペン:油性ボールペン、水拭きマッキー、油性マーカー
書けるペン:鉛筆
乾きが遅く実用的でないペン:万年筆、水性ボールペン、ゲルインキボールペン
カラータイプは裏面が白く、この面はホワイトボードのように使えるという話でしたので、そちらも試してみました。
確かに書けて、消えます。
表面に書くと、ホワイトボードマーカーのアルコールがカラー部分を浸食するようで、ボードイレーザーで拭うとカラー塗装が落ちて白い線が残るようになってしまいます。
しばらく書いたり消したりしておりましたら、カラータイプは静電気が消失してしまったらしく、わりと簡単につかなくなってしまいました。
筆記具を選びまくる透明タイプは、なかなかしぶとくくっついています。
ただまあ、貼って剥がせる糊がついている一般的な付箋だって、二度三度剥がして書き直したりすれば粘着力は落ちますよね。粘着部分を触っちゃったりホコリとかゴミとかついたりすれば、すぐに自重を支えきれなくなって落ちちゃうのは同じです。
このSサイズでは「消す」ことなどもともと前提に置く必要はないと思うのですけど、もっと大きいサイズだと、もったいないから間違った文字を消したい、という場面があるかもしれません。
そういう意味では、マグネティックノートに最適な筆記具はゼブラの水拭きで消せるマッキーです。
もうセットで売った方がいいんじゃないかってくらいの相性の良さです。
カラータイプには油性ボールペンもいいです。書き心地、という意味でも。
ただし、透明タイプに油性ボールペンは不向きです。ダウンフォースで試してみましたが、加圧式でもだめでした。フィルムが厚く、ボールペンの先が沈み込んで抵抗が大きくなりボールの回転を阻害するので、インキがうまく出てくれないのです。
さて。
マグネティックノート、普段使いとしてはどうやって、何に使いましょうか。
紙の付箋のように手軽ではありませんし、ペンを選びます。
ホームページを見る限り、日本人が好きな「端を数ミリ飛び出させてインデックス代わりにする」使い方はあまり考えられてないようにも見受けられます。紙の付箋のほうが安くて取り回しもよさそうです。
アイデア出しを壁面に貼り出していく、糊で貼ると貼った側にダメージがいきそうな場所(相手が紙素材だったり繊細な塗装がされていたり)への一時的な掲示、パソコンのモニタや窓ガラスのような糊残りが見えてしまう場所への一時的なメモ置き場──そんな感じでしょうか。
手許にあるマグネティックノートを眺めながら、ちょっと考えてみようかと思います。
付記:写真を撮ってからこのブログを執筆するまでの45分間で、透明タイプも静電気が尽きたようです。壁からひらりと落ちてしまいました。 -
会社帰り、西武百貨店池袋店に寄りました。
西武池袋線の改札がある地下から入ると、入り口でジャン=ポール・ゴルチエのメジャーマフラー(というか全身メジャー人間)がお出迎えしてくれます。
でも、今日の用事は西武百貨店じゃないのです。
その奥、無印良品池袋西武店2階で催されている「STOCK展」を観るために、ここを訪れたのですから。
「STOCK展」は、「ストックされた(ストックしちゃった)もの」を、その持ち主の個性そのままにつるりと並べる、収納と蒐集を両立した展示会です。
並べられたものには説明はなく、ただ番号が振られているのみ。会場の入り口にA4判の30穴クリアファイルバインダーがあり、その中に必要最低限の(想像力を掻き立てられる)解説の用紙が挟まっています。
このファイルを片手に展示物を観るのです。
写真撮影がオールフリーだったので、中でも文房具がらみの展示を写真に収めて参りました。
例えば──
カッターの刃。
シャー芯。
日本刀の剃刀。
パッケージ……パッケージ……。
もともとこの展示に興味を持ったのは、この展示があったからなのですが。
デイリーポータルZの林さんの展示です。
でもまあ、他の展示も実に興味深く、今の自分にはできないこと──部屋が狭く、コレクションやストックを置くことができない悩み──を具現化しているこの展示が本当に羨ましく、とても輝いて見えたのは事実です。
会期は10月19日(月曜日)まで。
興味のある方はぜひ足を運んでみてください。
そして、小生に「あのパッケージはあの文房具だよ」と教えて下さい。何一つ特定できませんでしたので……orz -
東京は京橋にある、文房具店モリイチ。
その二階に設置された「八重洲文具室」は、様々な文房具に関連した催しが行われている場所です。
9月24日から、たいみちさんのコレクションを中心とした「日本と欧米のアンティーク事務用品展」が行われております。
冷たい雨が降りそぼる中、見学に行って参りました。
まずは写真をじっくりとご覧下さい。
とにかく圧巻のひとことです。
モリイチ京橋店は土曜日も営業しております。
平日は午前9時から午後6時まで。
土曜日は午前11時から午後5時まで。
10月3日(土曜日)と10日(土曜日)は、たいみちさんも在廊されるとのこと。その際には、古い鉛筆削りの実演もあるそうです。
みなさまも是非、アンティーク文房具の世界をご堪能下さい。 -
9月19日(土曜日)より全国公開となった劇場オリジナルアニメーション映画『心が叫びたがってるんだ。』を鑑賞して参りました。
ムスメとふたりで。
この絵柄とタイトルが指し示すとおり、人間の感情がきめ細やかに描写された青春群像アニメーションです。
ロケ地となった秩父市マニアにもグッとくるし、ミュージカル好きにも響くのではないかと思います。
派手な戦闘シーンや荒唐無稽なアクションシーンもなく、アニメーションという表現そのものが苦手な方でも感情移入しやすいんじゃないかと。
で。
今回はその『ここさけ』の劇場販売グッズの話です。
アニメーション映画のグッズというと、子供の玩具的なものか、マニアの蒐集物的なものか、あるいはフリクションボールか──という感じなのですが、今回は違います。
これがあるからです。
カミテリアの伝言メモ「ku・ru・ru」です。
販売形態はこのように薄い状態で、中に三種類の異なるイラストが印刷されたシート上の伝言メモが各10枚入っています。
ku・ru・ruの特徴は、くるりと巻くことで伝言部分を見えない内側に隠し、伝言メモを立体的にすることで机上での発見率を上げ、さらに本人だけにその開封を促すようなデザインに仕上がっていることです。
そのコンセプトはそのままに、映画グッズとしても実に趣深い仕上がりとなっています。
まずは、この映画の中でも重要な役割を担う「玉子」。
このキャラ、こう見えてとても扱いに困るヤツで、実はこれって映画を鑑賞したあとではたいへん使いづらいデザインなのです。
なので、映画を見ていないひとに渡す用に使いましょう。知らない方には「かわいいキャラ」で通せるかと。
続いて、物語の最初の転換点を奏でたアコーディオン。
実に見事な螺旋を描いております。
カミテリアの真骨頂を見た気がします。
そして何より、秩父市を舞台としたふたつの作品の共演が実に素晴らしい、最後のメモ。
左に配置されたのが、『ここさけ』の主人公たち。
右にいるのは、本作の前に作成されたテレビアニメーション『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の主人公たちです。
『あの花』は『ここさけ』と同じスタッフによる、やはり同じく秩父市を舞台にした青春物語でした。それぞれの世界観を現す「葉」と「花」が螺旋を描いてキャラたちの上を舞っています。
両方のアニメーション作品を知っている身からすれば、感動すら憶えるデザインです。
過去、様々な映画グッズがありました。
映画用に作られたものもあります。
市販品に名入れを施したものもあります。
創意工夫の見られるグッズもなかったわけではありません。
それでも、文房具というジャンルに絞って言えば、ここまで製品本体と映画作品の双方の特徴を活かして最高のデザインをした例を、寡聞にして小生は知りません。
850円(税抜)という価格も、三種30枚入りである従来の定番ku・ru・ruと50円しか変わりません。映画グッズなのに!
というわけで、この秋はぜひ劇場に足をお運びいただき、『ここさけ』ご覧になってみてください。そしてお帰りには本製品をお忘れなく。ベストバイ!